ホテルのインターネット無料接続(その1)

大阪の知人がホテルを始めると言うので、今からのホテルにはインターネットに接続が出来ないと駄目だよと、言ったことがきっかけになり、それじゃ作ってくださいと言われてしまいました。

私が、国内外でホテルからインターネット接続をした経験では、ホテルの電話機から線を外し、モデムに付けて接続できれば良い方で、国内ではこれも出来ないホテルが多い。出来たとしても電話代が掛り、電話回線の品質の悪い外国から、日本のアクセスポイントに国際電話をかけていた頃には、2400bps程度の速度で、毎晩¥8000にもなったことがあった。

アメリカでは、いまやモデム接続は速度が出ないので、電話線を使ってLANを使う方式(ADSL)が普及しつつあるが、日本ではモデムがまだ使われており、LAN接続と、モデム接続の両方が無料で出来れば、アピールすろものになると考えた。(現在、国内で無料接続を謳っているホテルは散見されるが、LANでもモデムでもと言う所は無い)

ホテルからインターネットへの接続は、客室のテレビの関係もあり、ケーブルテレビのインターネット接続を使うことにした。ケーブルテレビからのインターネット接続は、ケーブルモデム以降はLAN接続であり、LAN接続のサービスについてはさしたる問題も無いが、モデム接続には電話回路が必要になり、まともに電話回路をつければ非常に高価なシステムになってしまうので、これを如何に簡略化するかが開発のポイントになった。

かたや、ネット友達との話の中で、秋葉原の知る人ぞ知る「秋月電子」に簡易擬似電話交換機キットなるものがあり、これを使えば、NTTの電話回線を擬似ることが出来ると言うので、システム構築の専門家、電話回路の専門家等を中心に、知恵と時間を出し合ってこの仕組みを作ることにした。

2000年2月から始めて、6月末に納入し、順調に稼動しているが、このシステムに取り組んでの、紆余曲折を述べてみる。

 

コンセプトのギャップ
東京と大阪での話であり、共通の認識は「インターネットが使えるホテル」から出発した。 (私は当然全客室にモデムとLANのコンセントをつけることを考えていた)
オーナーとは2/15大阪でこの基本部分について打ち合わせし、ケーブルテレビに付属するインターネット接続を利用することを決めた。

このプロジェクト(FreeNetと言う)のメンバーは、ネットやSolutionの専門家で、単なるユーザーからの見解しか持たない私とでは経験と知見に大きなギャップがあった。

これらが、このプロジェクトの進展につれて、次第に大きくクローズアップされることになった。

ギャップその1
3/中旬に現地を見たいと思い、建設現場に行って見ると、想像以上に進んでいて、6階のうち4階から上はすでに天井が張られていた。客室にケーブルを引くことも出来ず、慌てて3階には電話線を、2回にはLAN用のケーブルを各室に引いてもらうよう依頼した。工事現場所長は、工程が遅れると不満そうであったが、ケーブルなしでは如何ともし難いので、無理を通した。(後で聞くと、オーナーは1階にインターネット接続が出来る場所を確保することを考えて、客室は外していたらしい)

ギャップその2
ケーブルテレビに付属する、インターネット接続は、接続する台数が3台までとなっており、この契約でも技術的にはシステムを組むことは可能であるが、客商売をするホテルが契約違反で問題になっても困るので、法人向けのサービスに変更した。これによりグローバルアドレスが取得出来るので、ケーブルテレビ経由で独自ドメインを取ることにした。
独自ドメインでホームページを開設し、WWWサーバーはケーブルテレビに置くことで考えていた。(パンフレットには準備中とあったので、確認もせずに)
ところがいざその段になって、WWWサーバーは預からないと言い出したので、やむなく別にレンタルすることにしたが、DNSサーバーの設定などで苦労することになった。

ギャップその3
このホテルでは、チェックイン時に自動支払機で宿泊料を支払えば、磁気カードに必要事項が記録され、部屋のキーにもなるシステムを採用している。またこのシステムは予約管理も出来るようになっているが、このシステムとの連携は一切出来ないようになっている。連携が出来ていれば、WEBからの予約や、各部屋へのケーブル引き回しなど、もっと工夫が出来たように思う。

ギャップその4
ホテルにパソコンを持ち込む人のレベルをどう考えるかについても、各人の認識がなかなか合わなかった。接続にかかわる諸設定の変更を何処まで許容出来るか、また「インターネット接続」の意味が、WEBサーフ、メールの使用、チャット参加、ネット電話、ゲーム等々急速にその活用範囲が拡大しているが、何処までをカバーするのかについても見切り発車になった。

 

システムのコンセプト
システムは下図のようになっており、LAN接続19室、モデム接続19室とした。

擬似回路
今回のプロジェクトの最大のポイントは、モデム接続である。 当初簡単に考えていたが、擬似回路はあくまで擬似回路であり、ROMの焼き直しなど手を加えることになった。
秋月電子で売られているものは、キットであり、基盤とパーツが袋に入っているものである。

左の写真は、これを組み立てた状態である。

これに電源をつけ、電話機をつなげば通話が出来る。

発信音もするし、着信時のベルもなる。

(ただそれだけのものではあるが)

パソコンのモデムからの信号をこの擬似回路で受けて、サーバー側のモデムに渡し、信号を変換してサーバーに取り込むのであるが、サーバーがわにプロバイダーなどが使っている集合モデムをつければ簡単に出来るものを、安くするためにこの擬似回路を部屋数だけ取り付けることにした。
これが、8台の擬似回路と8台のモデムと、見えないがスイッチング電源を取り付けた接続回路である。

このケース3つをラックに取り付けることにした。

19室+フロント用として20台必要であり2X8+1X4の配置とした。

モデム接続のテスト
サーバーと、モデム接続回路が出来上がったので、5月中旬に場所を借りて、インターネット仲間に声をかけて、パソコンを持ってきてもらい、負荷試験をすることになった。
2日間にわたる試験では、安定してサーバーに接続出来なかった。

判明したことは、SONYのパソコン内蔵のモデムは比較的相性が良いこと、サーバーへの接続が出来たりできなかったりすることである。

まったく接続できないマシンもある。擬似回路にバラツキがある等々が判明した。

サーバー担当の自宅の環境では、問題なく接続できるものが、この試験では接続できなかった。その後の調査でDNS設定の問題と判明し、再度持ち寄り試験をしたが、接続できるマシンは安定して接続できるが、接続できないマシンはどうやっても接続できないことが判明した。
擬似回路の発信音(400Hz)の周波数のずれ、波形の乱れが原因であろうと推定。ROMの焼き直し、コンデンサーの追加を行うことになった。
サーバーからのモデムのリセットにも問題がありそうであるが、納入まで時間もなく考えられる手を打って、大阪に持ち込むことにした。 (その2に続く