気候変動問題の動向と対応
世界の炭酸ガス排出量は年々増加し、最近時点では年間64億トン(94年:炭素換算)と発表されている。 今後は、経済発展や人口増加に伴い、発展途上国の排出量が大幅に増加する見通しであり、現状のペースで行くと100年後の排出量は現在の3倍になると報告されている。(IPCC報告) |
一方同報告書では、炭酸ガス濃度を産業革命前の2倍のレベルに抑えるには、排出量を現在の50%にまで削減する必要があるとしている。 これは発展途上国の伸びを考えると、先進国は現在の数分の一に抑えなければならない事を意味し、対応策に付いて先進各国の国内事情から意見の一致を困難にしている。 |
例えば米国はエネルギー消費量が増大傾向にあり、自国での削減には相当の努力が必要であるが、エネルギー効率の劣る東ドイツを含むドイツ、英国では国内石炭産業の合理化を推進中で、エネルギー転換等による削減が見込める事、フランスは原子力発電比率が高く今後の削減余地が少ない等、国毎の事情が異なっている。当然後進国はベース使用量に異議を申し立てるであろう。 |
本年12月京都で第3回締約国会議が行われ、2000年以降の地球温暖化防止のための議定書を採択する事になっているが、一律削減案と、国毎の事情を反映した差別化案の隔たりは大きい。議長国として自国の消費量が増加中である事も含めどう纏めるのか、苦しい立場に立たされている。 |
日本は「1人あたりの排出量を、2000年以降概ね1990年レベルで安定化する」を目標としている。
しかしながら、94年度は90年度比5%程度増加しており、このままでは目標達成が困難な状況にある。このような事から、政府は2000年の目標達成に向けて、総合的な省エネルギー対策を決定した。 産業部門には年1%の改善努力、省エネ法に基づく指導強化、省エネルギー設備導入支援、ベンチマークの策定等が盛り込まれている。 |
鉄鋼業はエネルギー使用量で11%、炭酸ガス排出量で13%と国内全体に占める比率は大きいが、オイルショック、円高への対応から、既に世界最高水準の操業成績をマークしており削減余地は大きくない。 単に製造に関わるエネルギーに関心を持つのでなく、加工工程、使用時、および廃棄回収まで見た、トータルエネルギー削減の見地からの対応が必要であり、その為には一般消費者に対する啓蒙運動が、より深く行われる必要があろう。 |