世界貿易センタービルへの同時テロと日本の役割

悲惨な出来事ではあるが、この報道を見ていて気になることが多すぎる。テレビ等で殆どすべての人は「今回は非人道的なテロであり、あってはならないことだ」と優等生的発言である。ただ一人、在日パレスチナの人が「痛ましい出来事であるが、これを引き起こした原因はアメリカにある」と指摘していた。
ブッシュ、パウエルの強硬派の情報操作と戦争への誘導に乗らないよう、冷静な判断が必要なのではなかろうか。
情報操作と思われる点
  • イスラム原理主義者による駐留米軍基地への攻撃が懸念されるとの通知が日本にもきていた事が事後になって明らかになった。発信元のアメリカが何故放置したのか?
  • 5日もたって、不審な動きをする民間旅客機は撃墜せよと指示したことが明らかになった。最初に突っ込んだ旅客機が乗っ取られ、NewYorkに転進した事は事故発生の15分前に管制官が知るところであり、2機目は更に時間があったにも拘らずこれを放置している。
    4機目のペンシルバニアでの墜落は、撃墜であろうがこの判断の評価は多大な被害の前にかき消されてしまっている。早くから撃墜していたら、世間からの非難に堪えられなかったからではないか。
  • 事故発生後の最初のブッシュ発言は「これは戦争である」であった。戦争と位置付ける事で、「報復」と言う暗いイメージを消し去ろうとした。
  • 2日目にはアラブ人を対象に身柄拘束が誤認も含め多発した。

これらの事は、事前にある程度の情報をもっていたものと考えざるを得ない。

その結果、ブッシュ、パウエルは正義感を振りかざす事で大多数の国民の賛同と、議会から無制限に近い権力を得て、大義名分の元にパレスチナ討伐が出来る事になった。
「民間人を巻き込んだ無差別テロ」という踏絵の元に同盟国の賛同を得て、「正義は我にあり」としているが果たしてそうであろうか。

今回の出来事を太平洋戦争と対比してみると、その近似性に驚かされる。

ABCD同盟に包囲されて、活路を見出そうとした日本、アメリカ・イギリスに後押しされたイスラエルの建国によって住む土地を追い出され、大国の都合主義に振り回され拝金民主主義文明に包囲され行き場のなくなったパレスチナ。

宣戦布告は(いまどきこんな物はないが)結果として遅れた日本と、数ヶ月前に出しているパレスチナ原理主義。いずれもアメリカ政府は知っていながら適切な対応策をとらなかった。相手に手を出させることで国民の意思統一を計った。いみじくも「パールハーバーの再現」との表現は的を得ている。

戦力的に劣っていれば奇襲しかない。奇襲するには最大の効果が得られるところを狙うのは当然であり、敵国を襲うと言う事であれば民間人の区別をするはずがない。我々だって鬼畜米英と教えられ、民間人は別と考えていたであろうか。

日本でも、少ない資材で間違いなく敵を倒すには、人間が操縦する武器が優れていると、人間魚雷を開発し、kamikazeという英単語まで作ったではないか。すでにパレスチナでは体にダイナマイトを巻きつけて、自爆する人間爆弾を使用しており、たまたま旅客機になっただけである。アラーの教えには聖なる戦い(ジハード)で命を差し出せば、死後「天上の楽園」に行く事が出来ると教えている。「神」を祭る「靖国神社」に行けると宣撫した共通点は日本人には理解できるはず。
50年程後で、イスラム系のどこかの元首が、今回のジハードの霊に敬意を表したら、被害国の人はどのような思いをするであろうか?首相の靖国神社参詣の危険性はここにある。

私は今回の災害を賛美する者でもなく、支援する者でもないが、一方的にアメリカから発信される情報に惑わされているのではないかと言う事への懸念が拭い去れない。
また、ブッシュに似た首相に率いられる日本の進路に懸念を持つものである。
見えない敵からのテロには断固として・・・・、在日米軍基地の防備・・・・・、ハイジャックされた旅客機の撃墜・・・と勇ましい発言が政府筋から聞こえてくる。これらは日本から遠く離れたところの出来事ではない。北朝鮮への拉致問題、工作船の領海侵入、高官の偽造旅券による密入国など、身近にいくらでも事例はあるではないか。その時政府は何をしただろうか?犬の遠吠えだけである。
また、超法規的取り扱いとして軍資金とともに日本赤軍を輸出し、彼らが犯したテロ行為もパレスチナ絡みであったが、今日ほどの怒りが出されたであろうか、政府は謝罪すら行わず、彼らが本拠にしていた国に対しての経済援助で取り繕い、極刑にもしていない。どうして今回は・・・・・・?
横須賀からイージス船が出向したとか、航空母艦が出向するとか、誰が見てもタリバンへの出撃である。彼らが日本をターゲットにしない保証はない。どうして在日米軍基地のみを心配するのか不可解である。(さしずめターゲットは新幹線と西新宿であろうか)或いは災難が起きて復讐の機運が世論になるのを望んでいるのかもしれない。
では、現在の日本に出来る貢献はなんであろうか。タリバンとの交渉にパキスタンが出向いたと言うだけで、経済封鎖を解くこと考える現政府の短絡型貢献では、湾岸戦争にお金だけで参加したと笑われた苦い経験の二の舞であろう。パキスタンが本気で交渉するはずがない。単なる形式に過ぎないと考えるのが妥当である。
アフガンはソ連が10年間侵攻して、手を焼いて撤退したところである(その時にはアメリカが裏からアフガンを支援した)イスラム原理主義者はアフガンだけにいるわけではない。日本を含め世界中に散在している。これを根絶やしに出来るわけがない。では、最後の締めは誰とするのであろう。調停役になりうるのは残念ながら日本ではない。大国であるソ連もなりえず、結局は中国になるであろう。
とすれば、今後日本の取る道は、東洋文化と西洋文化を融合したと言う自負を発揮して、世界の調停役になることではなかろうか。たまたま日本には無神論的考えの比率が高いことも役に立つであろう。若者に対しては、グローバルな立場での発想が出来るような教育が必要であるし、外国人に対する奨学金制度の拡大、留学生への支援等教育面の施策が必要であろう。ただ東南アジアから日本への留学生が、自国に帰国後必ずしも親日派にならず、反日派が多い現状を反省し、受け入れの態度を改めるなど、国を挙げての支援が必要である。簡単ではないが軍事力を持たず、世界の信用を得るには経済力をこのような形で使うべきではなかろうか。
諸外国へのスキルの輸出も、年金生活者などを活用すれば費用対効果の点で効率がいいと思うが、農耕民族だからか「骨は日本に埋めたい」願望が日本人に多い事で出稼ぎ気分では先方に信用されない事になりかねない点に心配がある。
10年単位での周到な準備が必要であるが、何しろ経済大国!銀行にただで公金を投入しどぶに捨てるよりは効果があり、やりがいもあると思う。