DTPに挑戦顛末記
ユーザーとしてのパソコンの使用経験は10年以上あるが、今回無謀にも日本語・韓国語の会誌の印刷前の編集を引き受けた。 戸惑いながらも一応の完成をみたので、その経験を纏めた。 (2003年版) | |
7月の終わりごろ日韓弁護士協議会の会長代行をしている弟から、日韓弁護士協議会の会誌を見せられ、「これを作りたい、ついてはすでに(有)タイメイ複写と言う印刷屋さんと打ち合わせをし、次の条件なら受けられると言うので、これに従がって編集して欲しい」との話があった。 タイメイ複写の提示した条件は次のとおりである。 1)表紙はIllustrator のデータで、Outline化したもの 要はDTP(Disk Top
Publishing)だな、初めてのことだが何事も経験だから、と軽い気持ちで引き受けた。 印刷の仕組みも分からぬまま始めてみると、戸惑う事が多くスムースには進まなかった。 |
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1)表紙に使用するソフト 表紙はAdobe社の Illustrator を使い、出力はアウトラインで欲しいと条件がついている。 このソフトは持っていたが、図面を書いたりする程度で、印刷用の出力はしたことがなかった。 まずはアウトライン出力とは何ぞやを調べ、分かったつもりで試作品をタイメイ複写に持ち込んでみたが見事失敗。 先方は編集をしていないので、ソフトの使い方までは知らない、試行錯誤のはてに何とか先方の画面上に表示出来てまずは第一関門突破。 これは画面全体を画像化することで 使っているフォントに関係なく印刷が出来る仕組みで、通常のパソコンからの印刷には使わない機能である。 |
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2)表紙の題名に使用するフォント たった1行の表題であるが、ありあわせの写真と手持ちのフォントを使って表紙を作り印刷してみたら、表題のフォントが従来のものと全く違う事に気が付いた。 インターネットのメール仲間に印刷会社の社長が居たことを思い出し2年ぶりのメールで尋ねた所「このような印刷に使うフォントは通常のソフトに添付されているフォントには無い。ネットから購入するか、ソフトとして販売しているのでそれを購入しなさい」との助言メールがあり、追いかけて電話で 「ど素人がやるのは大変ですよ、われわれはその部分でオマンマを食っているのですよ、まあ頑張ってね!」と激励されてしまった。 ネット上で検索し、サンプルフォントを数種類ダウンロードして見たが、サンプルの字数は限定されており、印刷してみたものの、果たしてこれで良いかどうか判然としない。送金して購入すれば良いものの、1セット3000円程度するのであきらめた。(何セット買う事になるか分からないので) パソコンショップでフォントを探したが、沢山有りすぎてこれまた決めかねるありさま。 似たようなフォントならいくらでも有るが、なんとか従来のものと同じ物にしたいと考えた。 フォントメーカーもさるもので、一つのパッケージには3つほどのフォントサイズしか入ってなく、それも奇数番のフォントサイズ、偶数番のフォントサイズが別の組み合わせになっている。パッケージには見本のフォントが印刷してあるが、サイズが少し違ったとなると次のサイズは別のパッケージになっている。 従来の会誌の表紙フォントを計測し、エイヤッ!と決めたのが、大日本スクリーン製造株式会社、千都フォントライブラリーのヒラギノ明朝体である。 |
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3)写真(表紙) 表紙の写真には開催地の神戸を代表する写真を使いたいとネットで探した。 神戸港と日本丸の写真があったので、作者に使用許可を得るべくメールを出したが、なしのつぶて。 結局は 神戸在住の宮永弁護士のご努力で、神戸市から入手された写真を使った。 プロの技の凄さを実感したのは、この写真を挿入した表紙を通常のプリンターで出力したものと、出来上がった表紙を並べたときである。 会誌の写真の精細さはインクジェットプリンターよりはるかにすぐれていた。 |
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4)写真(顔) 表紙以外には挨拶文に顔写真を入れた。それぞれメールに添付で送付頂いた写真を、適当にトリミングして使った。インクジェットプリンターで出力するとさして気にならないが、印刷機に掛けると精細さが仇になり、荒れが目立つようになる。 印刷に使う写真の提供は、大きなサイズ(ピクセル)にしておく事が必要である。 理想的には350pdi以上のサイズが欲しいもの。 |
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5)イラスト 本文中に秋の花をイラストで入れた。またゴルフのイラストも入れたが、これらはネット上から使用フリーのイラストを探して使用した。 いくらでも有りそうであるが、(実際にあるが)使用フリーと言うものはなかなか見つからない。ゴルフのイラストはいくらでもありそうだが、セットで購入して開いてみないと分からないものばかりであった。 仕方無しにゴルフに似た雰囲気のフリー画像をそれらしく修正して使った。 絵の素養があれば自分でイラストを描けばいいのだろうが、どこかに忘れて生まれたので仕方が無い |
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6)日本語原稿の編集 日本語で書かれた日本側の原稿は、後述する脚注の使い方を除き、行間設定の変更とフォント(MS明朝)設定変更だけで済み比較的簡単であった。 欲を言えば、テキストエディタで書いてもらえば編集がもっと楽になるが、通常テキストエディタは使われていないと思うので無理だろう。 韓国側で作成された日本語原稿は、韓国で使われている漢字フォントが使われており、これは日本で通常使っているフォントと異なっているので、そのままコピーペーストすると、所々にフォントが無く黒点になる個所がある。 フォントが無いのではなく、フォント番号が違うから表示されないもので、元原稿を見てMS明朝で入力すれば修正出来る。 韓国で使われているフォントはBatangであったが、フォントの混在は好ましくないので全てMS明朝にし、フォントの差異は全て修正した。 あとは行間設定とフォント設定で編集は完了する。 |
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7)韓国語原稿の編集 韓国語の原稿にはハングル文字のみのものと、ハングルと漢字が混在したものがある。 いずれもメールに添付の形で送られてきた。 ハングル文字だけのものは、文中に入っているスペースに気を付けるだけで、フォントを日本で言うところの明朝体に変更すれば、後は行間とフォントサイズの設定で終わる。 ハングルと漢字混在の原稿が問題である。まず日本語原稿に述べたように、漢字のフォントが無いものが有り、この修正が必要になるが、このときにはMS明朝フォントを使う。 ところが韓国から送られてきた原稿中の漢字は、韓国語OSに付属しているフォント(Batang)なので、漢字文字列の中に一字だけMS明朝を使うと違和感が出るので、その場合にはその文字列はMS明朝に修正した。 次に漢字は明朝体でハングルはゴチック体になっていた原稿があった。 フォントが違うので、全てを一括して明朝体には出来ず、しこしこと修正をしたが、ばかばかしいほど長時間を必要とした。 結局ハングルと漢字混在の原稿はつぎのようになった。 ハングルはBatang(明朝体) ヘッダーのみKS Gothic(ゴチック体) 漢字はBatangとMS明朝混在(上述のように一部の文字列のみMS明朝にしたため) 今後は韓国側の原稿に使用するフォントは明朝体のみを使うように依頼すべきである。 |
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8)ヘッダー/フッター/脚注 各ページにはヘッダーとフッターの機能を使って、内容表示とページ表示を行った。 しかしながら脚注を使用したページにはフッター機能が使えなかった。(単に私が使い方を知らないだけなのだろうが) 印刷に提供するデータが、デジタルデータであれば、面子にかけても使うところであるが、今回はプリントアウトしたものを渡すので、苦し紛れにヘッダーとフッターを予め印刷した用紙に本文を再度印刷してごまかした。 |
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9)専用のメールボックス設置 今回の連絡専用にメールアドレスを新設し、転送設定をして私の自宅でもメールが受信できるように設定しておいた。 こうする事で自宅で原稿を直接見ることが出来、上述の修正作業が遅滞なく私の手馴れたパソコンで出来るようにした。 韓国から発信されたメールは2箇所からで、一つはYahooメールを使用し、他方はプロバイダー経由のOutlook Expressを使ったものであったが、いずれもメール本文は文字化けして判読できなかった。 私の使っているメーラーは、Beckyと言う高性能のメールソフトであるがどうしても表示できない。これは前述のように、韓国語OSに付属している、漢字フォントが違うからと推定した。 また添付ファイル名も文字化けしている。 先方では親切心から漢字を使ったものと思われる。 次回以降は、メール本文と添付ファイルには英語を使ってもらい、どうしても日本語で書きたいときには、WORDで書いて、添付ファイルとして送ってもらうようにすべきである。 この件は、現地で見てないのではっきりと分からないが、日本から出すメールは韓国で日本語として見られるとの事で、先方は韓国から出すメールでも日本語で書けば読めるものとの誤解があるようだ。 フォントコードの問題で、先方のメーラーに使う日本語が ISO-2022-JP であれば問題はなくなるはずではある。 |
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編集作業を終わって ・ WINDOWSの多言語対応の素晴らしさを実感した。 未だ問題も多々残っているが、ともかく事前の打ち合わせ無しに、別々の場所でインプットしたデータを集めれば簡単に出来てしまう。 ・ DTPと言う言葉は知っていたが実際に手がけてみて餅は餅屋と言う感じを深くした。 出来上がった会誌を手にしてその目で見ると、細かい所に不満な点が残っていた。 ・ しかしながら、ど素人でも何とかやれば出来るのが ITである。 今回もまた他人の褌で良い相撲が取れたものと感謝している。
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2回目の挑戦での問題点 (2005年版)
1) WORDの使い方 WORDにはいろいろな設定法があり、使う人の「癖」がある。例えば行頭の字下げ一つとっても、1) スペースを入れる。 2)
インデントを使う。 3)
タブを使う。の3方法がある。 そのまま印刷するならどの方法でも良いが、印刷サイズはB5なので送られた原稿を用紙変更と余白変更で使いたいときに、これが
邪魔をする。 また改行の使い方、行間の開け方にもそれぞれ癖があり、修正に思わぬ手間が掛かった。 |
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2) 開けなかったファイル
一太郎で作られたもの、韓国のワープロで作られたものはWIN-XP、WORD2003、IMEの環境では開くことが出来なかった。 一太郎のものは、テキストファイルで再送付願って解決した。 この件は後日JustSystem社提供FreeSOFTの「一太郎ビューア」で開けることが判明した。 |
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3) 写真
前回の経験から、顔写真はピクセルの大きいものを頂きそれを使うことにしたので問題はなくなったが、環境問題の原稿に、絶滅品種の3つのカラー写真があり、このページのみはカラー印刷を考えた。 原稿には写真を入手したURLがあったので、それを頼りにネットで探した。 日本語のページのものはTOPページに写真を見つけたが、英文のページはURLが
無くなっていて見つからない。ハワイ諸島に生息するpalilaと言う小鳥なので、この名前でネット上を検索し、ようやく同じ写真を見つけることが出来た。 最後に韓国のページは環境団体のページであろうか膨大なページで、動画がわんさとありチェックに時間が掛かったが、数時間の格闘の末、同じ写真を見つけることが出来た。 |
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4) 表紙の写真
今回会場はホテルニューオータニ大阪であり、大阪城とビジネスパークが入った写真を使いたいと考えた。ネットで探し、使いたいアングルの写真を見つけ、その方に
利用の許可等得るべくメールしたが「大阪市の広報で見つけたもの、これを撮った場所は解体されたのでもっと低い場所からしか撮れないでしょう」とのこと
。 その写真は新緑の写真で、開催される11月にはふさわしくないので、大阪の知人に頼んだ。 彼は大阪歴史博物館に5〜6回足を運び、フィルム10本ほど撮影して送ってくれた。 10月下旬のものがやっと秋空の風情になりこれを使うことにした。
(私のD70なら使えると思ったが、天気相手では東京から出掛けるわけにも行かず)普通のデジカメでは階調に不安があり、フィルムにしたが、印刷で350dpiを要求されると、35mmフィルムでは2400dpi以上でのスキャンが必要で、専用のスキャナが必要になる。(兼用でトライしたがなかなかうまく行かなかった)10月からゴミの有料収集が始まるので、10年ほど前のNIKONのフィルムスキャナを無料の内にと処分したのが悔やまれ、結局専門業者でスキャンして貰った。 |
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5) 表紙
表紙はIllustratorを使い、アウトラインにすれば良いことは分かっていたが、2年前の経験は前のバージョンで、今使っている CS
ではアウトラインにする方法が異なっておりもたついた。 また出来上がったファイルが、先方のバージョンが古く認識しない。 バージョンダウンしてやっと使えることを確認した。 |
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6) 印刷を終わって 印刷を終わって納品されたものに2点のミスを発見した。 ・ 日本語のフォントが一部分違ったものになっていた。
WORD画面では見つけ難いが、印刷すると太字体になっている文字がある。 ここでは「国」「会」「関」などである。 140ページ中の1ページの約1/3部分であるが残念である。 韓国で翻訳と日本語入力したもので、対策としては一度テキストエディタに移した後、日本語WORDに移せばこのミスは防ぐことが出来る。 |
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WORDの画面をキャプチャーしたもの |
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印刷されたものをスキャナーで取ったもの |
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・ 背表紙に印刷ミスがあった。 背表紙の原稿も印刷屋に出してあったが、2年前のものを修正して使ったらしく、年号は修正されていたが、発行回数が27号なのに25号になっていた。すでに会議場への発送は終わっていたので、急遽シールを作り貼ることとし、韓国への発送分は表紙を再印刷した。
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3回目の挑戦と留意点 (2009/8/19)
3回目の編集を頼まれた。既に2回経験しているので、最初に原稿作成上の注意書きを示し、それに従って頂くことにした。 注意書きの主要点はファイルはWORD、フォントはMS明朝かBatang。 (WORDが使えない時にはテキストファイルとお願いしたが、すべてWORDで入手出来た) 写真はピクセルの大きいものなどである。 入手原稿からの編集 頂いた原稿はA4で作成されており、印刷する冊子はB5版である。殆どの原稿は次の手順で編集した。 (原稿によっては、全文をテキストファイルに移す事でWORDの諸設定をキャンセルし、再度WORDに移したものもある) 1)WORDで原稿を開き、「ファイル」「ページ設定」から「用紙」をB5、余白を上下左右65程度に設定する。 2)B5に変更出来たら別名で保存し、本文のフォントサイズを10.5とし、「書式」「段落」で行間を整える。 日本文と韓国文でページ数が合わないときには、行間の調整(前述)と「書式」「フォント」「文字幅と間隔」を調整すればほぼ合わせる事が出来る。 3)漢字交じりのハングル文章は、プリントして漢字が正常かどうかチェックする。 異常があればその漢字は「MS明朝」にて再インプットする。数字についても要注意。 4)アルファベット表記については原稿作成者のソフト設定によってによって表示するフォントが異なるのでチェックして統一した。 5)ページ数は別途ページ数だけを表示するファイルを作っておき、2度刷りを行った。 6)最近知り合った印刷業に従事していた人から「写真はグレイ印刷の場合でも、原稿はカラーの方が綺麗だよ」と聞いたので、原稿に挿入する写真はカラーでプリントした。 プログラム等の編集
通常、文章の見栄えの観点からフォントにプロポーショナルが使われるが、これを使うと空白を含む行を並べたとき、空白の位置が一定しない。タブを多用するか、罫線を消した表を適用するが良かろう。 国際会議の資料なので、氏名にはアルファベット表記を付けたいと思った。日本側資料にこれのないものがあり、勝手に付けてチェックしてもらおうと思ったがこれが思うようにいかなかった。仮編集でチェックを依頼したが、なかなかそこまでチェックが無く、下刷りで修正が出た。 ルールのない 表記なので、今後は必ずご本人のアルファベット表記を示してもらいたいもの。(例えば大山の場合OYAMA、OOYAMA、OHYAMA等はご本人の好みである) |
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