デジカメの選択(2004/1)

 

ついにデジカメは銀塩カメラを乗り越えて映像記録機器のトップに踊り出た。購入に当たっての助言を求められる事も多いので、民生用のデジカメに付いての私の知見を纏めた。

選択に当たっては次の点に注目すべきと考えている。(スナップ程度の用途なら5番まで)

  留 意 点 選 択 項 目 理  由
1 画素数 200/300万画素 A4に印刷するなら200万画素あれば充分である。400万画素以上は必要としないし弊害が出てくる と考えている。
2 CCDサイズ 1/2インチ以上 画素が大きいほど、より多くの光を受光、蓄積出来る。
3 レンズ 広角側がより広角のもの

望遠でも明るいもの

3倍ズームが標準になってきたのでこれを選択するとして、実際の使用で望遠は頻度が少ない事から2倍でも良い。
注目点は広角側で35mm換算の焦点距離35mm以下が望ましい。
F値は小さいもの(明るいもの)特に望遠側で暗くなるものは(F値が大きくなるものは)問題である。 望遠を多用する場合には手ぶれ防止付きが望ましい。
4 セルフタイマー 設定時間が選択できるもの。 普通10秒の設定であるが、3秒くらいの設定が使えると便利。 夜景撮影やマクロを使った近接撮影などは、普通に写したのでは手ブレしてしまうので、カメラを固定してセルフタイマーで写す必要がある。
5 フラッシュ 明るいもの
(使用可能距離の長いもの)
最近の小型化を志向したものは、電池容量も小さく、形だけのストロボで集合写真など撮れようが無い。4・5人が横一列に並んだ記念撮影が限界である。  使用可能距離が4mは欲しいものである。 
6 フォーカス 手動可能なもの ピント合わせはオートでほぼ問題無いが、対象によってはピントが合わせ難いものがあるので、その場合容易に手動で合わせられるものが必要になる。
7 マクロ 接近距離の短いもの 一般的な使い方ではないかもしれないが、時に局部拡大写真を撮りたいときがある。切手が画面一杯に写せるものを推奨する。このときセルフタイマーが使えないと手ブレに悩む事になる。
8 フィルタ取り付けネジ ネジが着いているもの レンズ前面にフィルタなどが取り付けられるもの。
以上はデジカメの仕様書に記載の項目であるが、これだけを見ると何を購入しても良いように見える。現実にどのカメラを使っても水準以上の画像は撮れる。

最近気になりだしたのは、各社の(カメラ毎か?)画像処理のアルゴリズムである。デジカメはCCDの3ミクロン程度の画素に蓄積された光の情報を取り込んで、演算回路を通して色の演算、シャープネス、圧縮等の各種演算処理の後、メモリにデータを送っている。 青空の色を妙に強調するようになっていたり、花園を写すと妙に花や葉が強調されたりするカメラが多い。
銀塩フィルムでもメーカーによって色調が違っていて好みが分かれたものである。その点では色調の違いは目を閉じるとしても、シャープネスを過大に掛けるのは如何なものか。 聞くところによると、ピントが甘いとの風説対応とのことであるが、そうであればせめて手動でシャープネスの設定が変えられるようにして欲しいものである。

下の写真はいずれも200万画素の画像である。 右のほうの横に走っているケーブルの上下に色の薄い部分があるが(電柱の左側にも見られる)、これがシャープネスの影響と思っている。 色調の違いは補色系(左)と原色系(右)の差と、色の演算時の差で補正したければ容易に補正できるが、シャープネスの影響は補正できない。

   
その他持っておくと便利なもの
 
簡易三脚 夜景を取るときの手ぶれ防止 (セルフタイマーと併用の要あり)
偏光フィルタ 風景写真がスッキリクッキリ写る。 レンズに取り付けのネジがないと使えないが・・・。(反射光防止と露光調整)
増設フラッシュ 対応していないカメラでも使える可能性あり
カードリーダー 通常カメラとパソコンの接続ケーブルが付属しているが、USB接続のカードリーダーを使うほうが電池切れの心配も無く簡便である

 

画素

画素数が多いほど写真が詳細になり解像度が上がるという誤解があり(誤解と言い切るには問題があるが民生用の範囲では言っても良いだろう)、メーカーは画素数増大競争に大童な状況にあるが、画素数に付いては印刷及びファイルサイズの点から多ければ良いと言うものではないと思う。

印刷に必要なドット数
インクジェットプリンタで写真印刷するときには1インチ当たり150点のデータがあれば良いと言われている。 200万画素は1600X1200ピクセルの画像なので、A4( 約280X200mm)にデジタル写真を印刷するときには、短辺が152dpi程度になる(1200*25.4/200=152dpi)これで充分である。

ファイルサイズ
画素数が大きくなると撮影した画像のファイルサイズも大きくなる。メモリが安くなったとは言え、過剰に大きなファイルサイズは 大容量メモリを必要とし、パソコンへのデータ取り込み、パソコン上でのファイルの取り扱いにも苦労する事になる。 あまりにも大きいサイズの画像を非力なパソコンで扱っていて、フリーズしたと誤解して電源を切りリセットした実例がある。実はパソコンは延々と演算をしていたのだが ・・・・・。
一般的なファイルサイズは次の通り(メーカーによって圧縮率が違うので、目安にしかならないが)

ピクセル 画素数(万) ファイルサイズ(KB)
2,400×1,800 432 1700
2,048×1,536 314 1200
1,600×1,200 192 800
1,280×1,024 131 400
1,024× 768 78 320
800× 600 48 200
640× 480 30 70

 

CCDサイズ

画素数に対してチップサイズが小さい(画素ピッチが小さい)ほど感度が低いので、ダイナミックレンジが狭くなる。 蓄積される信号量も少ないのでゲインアップ する必要があり結果としてS/N比が落ちる。(ノイズが増える) チップサイズが小さいほどコストは安くなり、小型化、低消費電力になるが、私としてはあまり小さいCCDは勧めたくない。

ちなみにCCDサイズは対角寸法と思っていたが、実際の寸法とは全く違うもので、一種の呼びサイズである。よく使われているものの実例をここに示す。

CCD公称サイズ(対角) 実際の対角寸法 実際の寸法
1/4 CCD (25.4/4=6.35)   3.6o(W)×2.0o(H)
1/3 CCD (25.4/3=8.5) 6mm 4.8o(W)×3.6o(H)
1/2 CCD (25.4/2=12.7) 8mm 6.4o(W)×4.8o(H)
1/1.8CCD(25.4/1.8=14.1)    
2/3 CCD (25.4*2/3=17) 11mm 8.8o(W)×6.6o(H)

 

フラッシュ

最近のフラッシュの性能をカタログデータから拾い集めてみた。ほんの一部で全体を推定出来ないかもしれないが、レンズの明るさは広角端での F=2.8 が大多数を占めている。これに対して、フラッシュの可能範囲には相当な差があり、室内集合写真を撮る事を考えて、広角端で少しでも可能距離の長いものを選択すべきである。 所謂コンパクトタイプのものは、フラッシュを使っての撮影には不向きと言うことになる。

メーカー名 型番 広角端撮影
推奨距離m
望遠側撮影
推奨距離m
広角端
レンズF値
望遠側
レンズF値
NIKON 5400 0.5/4.5 0.5/2.8 2.8 4.6
  4300 0.4/3.7 0.4/2.3 2.8 4.9
  3700 0.4/3.0 0.4/1.7 2.8 4.9
Olympus C4100Z 0.8/3.6 0.2/3.6 2.8 2.8
  C755UZ 0.3/4.5 1.2/3.5 2.8 3.7
  myu25 0.2/3.6 0.2/3.60 3.1 5.2
Panasonic DMC-FX5     2.8 4.9
  FZ1K 0.3/2.1 0.3/2.1 2.8 2.8
Sanyo MZ3     2.7 4.9
Sony DSC-T1 0.3/1.5 0.5/1.5 3.5 4.4

 

偏光フィルタ (マニアックな人向け)

光は「波」の性質も持っており、回折現象が起きる。 絞りを通過する時に生じた回折光が焦点の周囲にボケになる。 その大きさは絞り値(F値)に比例して大きくなり、F22で半径15ミクロン程度になる。 銀塩フィルムの場合には半径15ミクロンは無視できるが、CCDのピッチ3ミクロン程度のデジカメでは、ボケが激しくて実用にならない。 F8に絞ったときのボケの半径は約4ミクロンで、デジカメのF値が8程度を上限にしている理由がここにある。 したがって光量が大きい風景写真の撮影に当たっては、光量を減ずるフィルターの使用が必要になるときがある。

同時に、風景などを撮影するときには、反射光が意外に多く(特に空とか木の葉、花弁など)、偏光フィルタを使うと偏光がカットされ鮮やかな画像を得る事が出来る。 偏光フィルタは2〜3絞り分光量をカットするので、その点でも好都合である。 ただし、偏光角度の設定に手間取るので、じっくり腰を落ち着けた撮影に限定されるが、非常に面白い小道具ではある。

ここにサンプルを出すが部屋の窓から庭の植木を写したものである。 回折現象を避けるために、絞りを固定して撮影した。 200万画素の画像から、そのまま切り出したものである。

偏光フィルタなし

撮影データ

NIKON E950

絞り優先AE
 F=3.5 1/142sec

木の葉の表面からの反射が多い。

偏光フィルタ使用

撮影データ

NIKON E950

絞り優先AE
 F=3.5 1/34sec

木の葉表面からの反射が緩和され、結果として暗部のディテールも見れるようになる。

 

写真の編集

デジカメで撮影するときには、メモリ容量は可能な限り大きいものを使い、写真のサイズ及び品質も最高にして撮影する。 写真をそのまま印刷するときにはそのまま印刷するが、ホームページやメールに使うときには、リサイズ・リサンプリングして写真サイズを小さくし、圧縮も掛けてファイルサイズを小さくして使う。 この写真の編集に付いては、簡便な方法をこちらで紹介している。