尼崎脱線事故に付いて思うこと |
2006/5/4 |
事故から1年が過ぎた。先日報道された事故調査中間報告では、原因は転覆限界を超えた速度でカーブに進入した事と証明されたそうだ。 しかしながら何故そのようなスピードであったかは不明とされている。 私は当初から居眠り運転を疑っているが、事故調査が技術的視点に偏っているように思えてならない。もっと人間工学的な観点からの調査を含めて、ハード・ソフト両面からの原因究明と対策が必要なのでは無かろうか。 急遽ATSが設置されたそうだが、これとて人が起因するシステムトラブルがしばしば発生したことを忘れてはならない。あくまでも人の補助の位置付けである。 私が製造現場に配属されたとき、先輩方からハインリッヒの法則を教えられた。「重大災害1件には休業に至るような災害が29件あり、その裏に300件のヒヤリハット事例がある 」と。従って災害に至らなかった300件の事例について十分な検討を行い、対策を積み重ねて行けば重大災害の芽を摘むことが出来ると理解し、現場責任者としてこれを如何に守るかに腐心した。 ヒヤリハット事例は、その作業をしている本人しかわからないもので、当然作業者が出さねばならない。「類似災害報告書」という形式に記入して貰うようにしたが、なかなか報告が出て来ない。書く方から見れば、書くこと自体に抵抗や躊躇がある。そして、出したものがどのように使われるのかにも不安がある。 そこで工夫を重ね、様式も変更し作業中の問題点の指摘を出して貰い、作業に関する諸標準の改訂を主目的にし、出すこと自体を評価対象にしたら、数多く出てくるようになった。 出て来たものを読んでその内容を理解するのが簡単ではない。現場で話を聞いてようやく問題点が理解できるものが多かった。作業現場に存在する暗黙知の世界を理解する必要があり、これは自ら実作業を体感してはじめて分かるものである。 今になって、JR西日本はダイヤに無理があり恒常的に遅れと回復運転が行われていたとか。どうしてこれが問題点として現場から上がらなかったのか、又管理者は何故見逃していたのか理解できない。 共同ニュースによると、JR西日本で批判が高まった社内の風通しの悪さを改善しようと、垣内社長が昨年7月に設置を表明した“目安箱”に労働組合などが「逆効果だ」と反発、暗礁に乗り上げているそうだ。 組合の言い分は、支社長が常に現場を回って意見を吸い上げる方が大事だと言うことらしいが、支社長に現場の暗黙知が理解できるはずもなく、そのためにこそ現場管理者が存在しているのではないかと言いたくなる。現場の声はフィルターを通しては 存在価値が減じてしまう。目安箱も支社長に訴える制度と言うが、従業員の人数を考えたら出来るはずも無かろう。
組織としての不完全さを糊塗する物としか思えない。そう言えば、公取が談合を申告すれば免責することにしたら摘発件数が増えた事を参考にしたのだろうか。ともかく組織としての管理体制を疑いたくなる
し、労組の無関心姿勢も腹立たしい。 |