新日鐵・住金の経営統合について

2011/2/22

面識は無いのだが以前から時々鉄鋼業についてメールによる質問をしてくる方から次の質問を頂いた。

早速ではありますが、先般、新日鐵と住金の経営統合が発表され、来るべき時が来たかという感じで受け止めております。
中略
現在のグローバル競争の中で、日新と経営統合をしてもステンレス事業の強化以外に意味があるとも思えませんし、神鋼が統合に加わるか否かは別にして、アルセロールミタルの脅威により包括提携を行い、運命共同体であった神戸製鋼に事前に話をしないことは考えにくいと感じますが。
経営統合で気がかりなのは、重複設備の統廃合であります。
当然ながら、光・東京の鋼管、室蘭・釜石の棒線、堺の形鋼、広畑の電磁鋼板あたりが対象になると推測されます。
熱押については、形鋼は新日鐵が強いと推測致しますが、鋼管については尼崎の方が名実ともに強いのではと推測致します。
線材については、室蘭・釜石と小倉との競合ではありますが、どちらが強いのかは推測できません。(銑鋼一貫がコスト的に優位であれば釜石が劣位にあるでしょうが)
電縫鋼管については、シェアのみを見れば新日鐵が優位にはありますが・・・。
シームレス管は住金の独壇場でありますが、一般的にUO管等の溶接管も住金が比較優位にあると考えます。
光熱押と尼崎、室蘭・釜石と小倉の技術的な優位性と差異につき、ご教示いただければ幸いです。

これに対してメールでの返事

ご質問を頂きながら返事が遅れて申し訳ありません。 既に退職して20年以上経っているので実情を何処まで認識しているのかが心配ですが、私見を整理してみます。
熱押
光熱押は昨年50周年参加時の資料にあるように 、現在では形鋼とステンレス鋼管のみの生産を行っています。ここで住金と競合するのはステンレス鋼管のみです。
形鋼:住金は住友機械向けフォークリフト用マスト形鋼の供給を試みたものの、精整矯正がうまくいかず光に供給を依頼し製造を断念しました。形鋼の生産には押出以降の精整矯正プロセスが重要で、ここには装置だけでは作れない経験知が必要です。この分野は世界唯一と思っています。
ステンレス鋼管:特にボイラーチューブで住金が強く光はこの分野への参入を試みましたが牙城を崩すには至りませんでした。従って二次加工用の素管と一般用の冷間加工管が主体です。
住金尼崎に統合メリットがあるからという理由で移管と言うことにはならないでしょう。
理由: 1)住金の熱押生産能力を考えたとき、さほど余力があるとは思えない
    2)ステンレス鋼管の一般需要分野は熱押工程での製造技術上の問題は無いので、サイズ別に尼崎と光を使い分けた方がコスト低減できる。
線材
住金の線材についてはよく知りません。新日鉄側からの見方しか出来ませんが・・・。
そもそも線材の一般需要分野は、特別な製造技術は要りません。5年ほど前に中国とタイの新しい線材工場を見学しましたが、新鋭工場で設備は日本より進んでいます。これでも需要の大半を占める一般用途用線材なら、ワーカーのスキルが劣り、生産能率・品質が日本より低くコスト高でも、労務費の安さで競争力は日本を凌駕しています。従って現在輸入線材が横行しているのが現状です。 併せて日本の電炉メーカーも線材を生産してるので、需要が多いとは言えこの一般需要分野ではすでに日本の高炉メーカは競争力を失っています。 従って品質の優位性しか生き残る道は無かろうと思います。

室蘭:量産には不適な一本通し圧延機で高級品質圧延に適した圧延機。高級線材製造に特化している。従って継続するものと思います。
釜石:鐵源を持たず需要立地でも無いので競争力無し。八幡富士合併時に閉鎖すべきだったものだが、これを無くすと製鉄所そのものがなくなり、地元の強い意向で存続したもの。さてこれを閉鎖する勇気が経営陣にあるかどうか。
君津:量産形工場で設備は古くなっているものの、世界で唯一のオンラインソルト熱処理設備があり高炭素鋼線材の生産には強い。従って残るでしょう。
光:ステンレスに特化した品質重点の設備。この圧延方法は他の追従を許さないので残るでしょう。(高級炭素鋼線材、例えば弁バネ用とかスチールコードなども光で実用化したものですし、君津のオンラインソルト熱処理設備も光で開発したもの)

住金小倉の線材工場は見たこともありませんが、高級鋼に特化しているようで室蘭・釜石との競合になるでしょう。ミルの特性に合わせたサイズ特化で双方生き残るのでは無いでしょうか。
問題は小倉の鐵源を如何にするかという事でしょう。八幡に依存する事になるような気がします。