東南アジアの電炉製の鋼板需要についての見解  
5月頃コンサルティング会社に勤めている方から、「東南アジアの電炉業界」についての質問を受けた。 質問の概要と私の回答を記載する。
1) タイの鉄鋼需要構造、特に電炉製のスラブを母材とする鋼板に対する市場の将来性について
  東京製鐵が日本で電炉鋼板の製造を始めましたが、これが所謂ハイエンド品に使われているとは到底考えられません。電炉製鋼はトランプエレメントから逃れることは出来ないので、ローエンド品しか作れないと思っています。かたや、鋼板のローエンド品の市場にはどんなものがあるのか見当が付きません。したがって 「そのための」 設備(スラブ連鋳、鋼板圧延設備等)はあり得ないでしょう。
2) タイ現地資本の電炉〜熱延・冷延の設備・技術・品質の水準や課題について
  私は電気炉製鋼、棒鋼圧延、線材圧延に関する技術指導を推進したのであり、鋼板関連は全く知りません。
棒鋼設備に関しては、欧州メーカから「購入・設置・初期作業指導」を受けておりそれ以降の作業技術の指導でした。
問題は新しい設備に見合った技術力を持つ人材を如何に養成するかと言うことでしょうがこの点については、人の入れ替えが多く大変との報告でした。
3) 電炉業の一般的な収益構造と主な収益改善策について
  原料価格、購入電力価格が同一とすれば、如何に操業度を上げるかと言うことでしょう。鐵は熱を使うので、炉設備の温度を落とすことは致命的です。製鋼炉・鋳造設備・圧延設備の能力バランスに配慮し、販売能力に見合った能力を検討することでしょう。当然交代勤務の24時間操業が前提です。

電炉を使っての鋼板製造の質問であったが、高炉が無ければ電炉で何とかしたいと言うことなのだろうか。つい最近環境省が電炉による自動車用の構造用鋼板の品質検証を東鉄に検証委託をしたと報じられた。 相当な無理があるように思うのだが。