渦流探傷試験と水圧試験の検査精度比較  
エンジニアリング会社の方から、STPG-370SH 鋼管についてJISでは水圧試験又は非破壊試験を注文者が指定または製造者が選択できるこになっている。 現在選定しているミルメーカーに水圧試験装置がないので、渦流探傷試験を採用したいと考えているが、客先から渦流探傷試験は水圧試験に比べて精度が劣るのか劣らないのかという問い合わせがあ り。
これについての見解を知りたい.と言う質問があった。

これについて以下のように返答した。

水圧試験の技術上の問題点は私のWEBに記載しているように、水漏れの肉眼検出に種々問題がありこれだけで品質保証にはならないと当時の我々は考えていました。したがって非破壊検査も行う事にしていました。

STPG-370SH鋼管といえばシームレス熱間仕上げのはずです。この製造方法にはマンネスマン方式と熱間押出方式があります。STPGは通常マンネスマン方式で製造されるものです。 残念ながら私は熱間押出の経験しかなくマンネスマン方式の経験がありません。したがって工程特有の管理項目の知見がありません。

水圧試験で見つかる欠陥は貫通欠陥だけです。今時貫通欠陥が生じるような作業を行っているとは考えられませんが、原発事故で有名になった「想定外」の事態を何処まで製造工程で管理しているかが問題です。こうした製造工程内の事故例は各社とも公表しませんし発生頻度も極めて低いので事故を経験した人も殆ど居なくなっているのが現状でしょう。発生したときにその原因を調査し再発防止のための管理項目の見直しをしているかどうかが決めてではあります。

一方非破壊検査は標準欠陥を作り、その標準欠陥より大きい信号が見つかるとその部位を不合格とするものです。シームレスは通常渦流探傷になりますが、例えば小さな丸い穴が肉厚方向に貫通していると仮定した場合、渦流は穴の外縁に沿って回り込み外に出ないでしょう。こうなると検出出来ません。これは論理的に言うだけで現実には渦流が外部に漏れないような完全な「穴」を空ける方が難しいでしょうが・・・。

製造者は長い経験で、このようなときには重大欠陥が発生するという事例を持っているものです。それを防ぐための作業管理をしているはずで、それを信用するしか手が無いでしょう。
肉厚の数分の一程度の内部欠陥は水圧では見つかりませんが、渦流探傷なら見つけることは可能です。但し上記のように標準欠陥との対比で合否判定するので、一概に言えない悩ましさもありますが。

JISには水圧と非破壊を選択出来るようになっているとしても、両者は違う試験です。私の考えは水圧試験は製造工程の管理で補い、最終品質は渦流試験で行うべしと言うものです。 渦流試験に使う標準欠陥についてのメーカーの知見を聞く必要はあるでしょうが・・・。(重要なものにはその都度標準欠陥試験片を数種類作り渦流試験器の感度設定をしていました)

以上が私の考えです。