鐵鋼製造について  1997/9/23
第5話 Iron から Steel に
転炉製鋼法

高炉から出てきた鉄は銑鉄と言われ炭素を4%程度含有した鉄です。この鉄は硬くてもろいので、粘りのある強靭な鋼に変えなければなりません。 そのために、鉄から炭素やいたずらをする不純物を抜いて鋼にしますが、この精錬工程を製鋼と言います。

以前は「平炉」が使われていましたが、最近は生産性の高さと、熱エネルギーが不要な「転炉」が広く使われています。転炉はとっくり型の容器で、これに約1300度の融けている銑鉄とスクラップや石灰等を入れて、酸素を高圧で吹き付けると、融鉄中の炭素、燐、珪素、マンガンなどが燃えて熱を発生するとともに、融鉄から抜けていきます。(この時鉄も燃えて再び酸化するものもあります)

この為に、外部から熱を供給すること無く反応が進み非常に経済的な方法です。

酸素は超音速の速さで溶けた鉄の表面に吹きつけその部分の温度は2500度程度になり、溶けた鉄は激しく攪拌され反応は急速に進み炭素が減って、わずか20分ほどで鉄は鋼に変ります。

鋼は使用される用途に応じて要求される特性が異なるので、最後の段階で必要な成分調整を行う必要があります。この成分調整も需要からの要求の多様化と、それに対応する技術の進歩により、きわめて精度の高い制御が必要になり、それ専用の「炉」が使われるようになりました。 このように鉄は高炉から溶けた状態で出てきた後、溶けたままで精錬され、精度の高い成分調整を行った後、冷やされて固められます。すべての反応が分の単位の時間で急速に進むので、この制御にはコンピュータがフルに活用されています。
電気炉製鋼法

製鋼には前に述べた転炉を使う方法と電気炉を使う方法があります。 名の通り電気の熱を利用して鋼を製造します。 原料はスクラップが主体で炉の中にスクラップを入れ黒鉛で作られた電極とスクラップの間にアークを飛ばして、その熱でスクラップを溶かし精練する方式です。

電気炉の形は蓋の付いた鍋の形で、蓋には電極が付いています。 従来は交流をそのまま使うので3本の電極が付いていますが、最近設置されるものは直流式になり1本の電極で済むようになりました。スクラップが溶けた後電気で熱を自由に加えられるので、じっくりと成分の調整などが出来ることから、昔は特殊鋼の製造に使われていましたが、最近は普通鋼の分野で盛んに使われるようになりました。

電気炉製鋼の問題は、スクラップの品位が安定しないこと、スクラップが工業的に生産されるものでないこと、電気のコストが高い事です。 そもそも世界一高い料金の上に、電気料金の仕組みは夜間時間帯は昼間の時間帯に比べ安い価格体系になっているので、ほとんどの電気炉は夜間だけ操業しています。 “ふくろう部隊”と言っていますが、本来人間の体内時計は昼間活動し、夜は睡眠を取ることで成り立っているのですが。
#電力会社は電気代が高いのは、需要のピークに合わせた装備を持っているのでと言いますが、夜間時間帯の負荷を調整している電気炉業には、もう少し対応があっても良いのでは#      
スクラップ
鐵はリサイクルの観点から見ても優等生です。屑となった鐵は回収され再び鉄鋼製品となって再生されています。 電気炉はこのスクラップを主原料として使っており、全世界の鉄生産の1/3はスクラップから作られています。

スクラップを原料として考えるとき、二つの問題があります。それは一般の工業用原料と異なり計画的に量と質をコントロール出来ない事です。 量に付いてみると、製鉄プロセス内で循環するものが約10%、鉄鋼製品加工時に発生する加工屑が約10%でこれは定常的に発生しますが、残りの80%は老廃屑といわれるものです。

ビルの解体、設備の更新、廃棄自動車、飲料缶などですが、この量は安定していません。 この老廃屑の量は鉄鋼の蓄積量に比例すると考えられます。蓄積量は大略アメリカが35億トン、日本12億トン、ドイツ7億トンが世界のベストスリーです。ドイツ以下にヨーロッパ勢が並びます。 年間の老廃屑の発生はこの蓄積量の2から3%になっています。 従ってスクラップの発生源は世界的に見て、アメリカ、ヨーロッパ、日本となります。とは言え、日本で発生している老廃屑のうち、年間1000万トン程度は“ごみ”として埋め立て等に廃棄されているのではないでしょうか。折角の資源が無駄になっています。分別収集をもっと積極的に進めるべきだと思います。

一方電気炉による製鉄法は設備投資が高炉法に比べ安価で済むので、中後進国はまず最初に電気炉による鐵作りを目指します。特に中東諸国、東南アジアが盛んです。 この事自体は大変結構なのですが、原料となるスクラップの需要と供給のバランスが今後の最大の問題です。

次の問題は不純物元素の影響です。鉄鉱石は不純物が混入する暇なしに酸化鉄になって堆積したので、これを主原料にする高炉法では問題になりませんが、スクラップにはいろんな物が付着、或いは混入してきます。 世の中が軽薄短小になり、ますます鐵以外の比率が増えています。 鐵は他の元素を比較的簡単に溶かし込む鷹揚さをもっているので原料からの混入元素が問題で、使用用途が限定されます。

一般に不純物が多いと鋼は硬く強くなります。強度を必要とする用途にはその意味でいろんな合金を添加します。スクラップから混入する不純物はその意味では強みでもありますが、混入量をコントロールすることが出来ないことが問題で、厳しい加工性を求められる用途には、不向きになります。技術的には対処可能なのですが、経済的生産工程にはなりません。

そうした意味から、老廃屑から不純物を除去して上手に使う方法がナショナルプロジェクトとして進められています。

#自動車に使われている小型モーターのコイルを銅から鐵に替えられないかと言って白い目で睨まれたことだありました#

(参考文献:白石記念講座 普通鋼電気炉業のストラテジィー。私もこれに講演しています。)