ステンレスあれこれ話 98/10/01

耐熱性(耐酸化性)を活かした用途
ゴミ焼却炉
家庭用のゴミ焼却炉もステンレスで作れば半永久的に使えます。20年ほど前に持ち家制度を利用して2x4工法で自宅を作りますたが、その時知り合いの鐵工屋に頼んで10mmの厚板で家庭用としてはびっくりするような大きなゴミ焼却炉を作ってもらいました。庭の片隅の置いて重宝しましたが、良く燃えるだけに温度が上がったのでしょう、一年の使用で酸化腐食でごみを入れる蓋が止まらなくなりました。 ぺらぺらの鉄板で作ったごみを焼くドラム缶に毛の生えたようなものが一万円くらいで売られていますが、恐らく一年も持たないでしょう。

10数年前に、新規事業としてあれこれ考えた時に、ステンレスで家庭用ゴミ焼炉を作り市販する事を考え、試供品の試用を始めた所、表面に色は付くものの、減肉までには至らず恐らく半永久的に使える事が確認できました。 ところがこれを市中の金物屋に持ち込むと4割から5割のマージンを要求され、原価二万円ほどのものが販売価格四万くらいになり、これを買う人はいませんでした。仕方なく余剰要員を活用して訪問販売をした事がありますが、25千円で買った人は今でも使えているはずです。
自動車排気ガス系
このように800〜900℃間での温度で使う材料としてはステンレスが最適です。自動車の排気ガス系にもステンレスが使われています。 それは良いのですが、私がクラウンを買って、冬にスキーに良く行きましたが、2冬目にマフラーを取り付けているサポートが腐食してマフラーが片持ちになり、バンパーの下に当たり、樹脂だったもので排気管で大きなえぐりを作りました。良く見るとサポートは普通鋼薄板の亜鉛メッキ材をプレスしたもので、どう見てもすぐ腐食しそうなものでした。道路の塩により腐食が進んだ事とは思いますが、えらい手抜きだなーと憤慨したものです。自動車屋にはステンレスの切れ端を持って行き、これを使ってもらいました。
このように800〜900℃間での温度で使う材料としてはステンレスが最適です。自動車の排気ガス系にもステンレスが使われています。 それは良いのですが、私がクラウンを買って、冬にスキーに良く行きましたが、2冬目にマフラーを取り付けているサポートが腐食してマフラーが片持ちになり、バンパーの下に当たり、樹脂だったもので排気管で大きなえぐりを作りました。良く見るとサポートは普通鋼薄板の亜鉛メッキ材をプレスしたもので、どう見てもすぐ腐食しそうなものでした。道路の塩により腐食が進んだ事とは思いますが、えらい手抜きだなーと憤慨したものです。自動車屋にはステンレスの切れ端を持って行き、これを使ってもらいました。
 
熱伝導度を活かした用途
ステンレス鋼は熱伝導度が普通の鋼に比べ低い特徴があります。即ち熱を伝えにくいのです。 この特性を生かして新しい用途が開発されました。
風呂
風呂桶(バスタブと言いますが)には木製、ホーロー製、プラスチック樹脂製、ステンレスなどがありますが、その中でステンレスはなんとなく冷たい感じで、高級感がありません。 が、実用的にはステンレスが一番だと思います。お湯は冷え難いし、掃除も簡単だし、寿命も長く家の寿命より長く使えるでしょう。 と言いながら、持ち家を作った時には2階に風呂を置いたので水漏れ防止の点から樹脂製の一体成形品を使い、今回の転居で家の改装には、家族の要求を入れてホーロー製になりました。 そんな事で社宅の風呂の改装時にステンレスバスタブを使っただけですが、確かに風呂にはステンレスが適していると実感しました。問題はどうやって普及させるかでしょう。 地球環境問題から省エネを前面に押し出し、高級感を出す事が必要なのでしょうか。 ステンレスバスタブは1枚の板をプレスで深絞りして作るので、最初のころは十分な広さの板が出来ず、従ってひざを曲げてチジ込まないとは入れないような小さなバスタブしか作れませんでした。 また工事が簡単なので、公団住宅で普及した事が高級感を阻害したのでしょう。
マホービン・マグカップ
マホー壜はガラスが2重になっていて、その内側は真空にし更に熱を反射する為に銀とかアルミをメッキしていました。これに対しステンレスを2重にして、その中を真空にしたマホー壜が開発されました。ガラスに比べて強度があるので薄い板が使え軽量化が図れ、外側をそのまま露出しても壊れる事はありません。バスタブと違ってマホー壜は携帯用としての機能性がファッション感覚にマッチし瞬く間に普及しました。
マホービンにあやかろうとコップを同じような仕組みで作りマグカップと命名しました。ビールを入れるといつまでも冷えているし、コーヒーを入れるといつまでも暖かいということで実用的には結構なのですが、価格が高い事とファッション性が無い事で失敗作でした。我が家には大小いくつかのマグカップがありますが、洗面用のコップに成り下がっています。
ビール醸造用のタンク(味覚と言う摩訶不思議)
ステンレスが普及し始めた時、ビールの醸造用のタンクにステンレスが使われるようになりました。これには溶接性のよいニッケル系が使われるのですが、普通の18-8ステンレスではなく何故かモリブデン(Mo)を含んだ耐食性のよい材料が使われました。モリブデンは耐食性を高めるので、化学用には良く使われるのですが、単価の高い元素でエキストラが付く品種です。この用途にはMoまではいらないだろうに何故と訊くと、ビールの味が違うのだとのことでした。味と言われるとドライすら利き分けられない私ははぁーっと言うだけでした。
ステンレスの磁性にまつわる話
ニッケル系のステンレスは磁性がないと言いましたが、実は常温で塑性加工(変形させる事)をすると硬くなると共に、磁性が出るようになります。この磁性を出難くする(加工しやすくする)には、ニッケルの量を増やせばいいのですが、前にも言ったように、ニッケルは非常に高い元素なのでコストがかかります。 例えば、ねじとかボルトなどは頭を叩いて広げ、さらにその部分にプラスの孔を打ちこんで加工します。このような用途にはニッケルを5%ぐらい追加して加えるのが普通です。以前にも書きましたが、磁石につくのはクロム系ステンレス=安いステンレスというイメージがあり、磁性を持つ製品は歓迎されません。 磁性があっては困る用途(例えば磁気浮上鉄道の周辺構築物など)は限られており、本質的に問題の無い部分にコストの高い材料を使うのはWORLD WIDEに考えた時無駄なことと思うのですが。

皆さんおなじみのフロッピーの裏中央にはセンターコアが付いていますが、これは駆動の為に磁性が必要なのでクロム系のステンレスが使われています。 シャッターには磁性があってはいけないのでニッケル系です。 最近はシャッターはステンレスが使われなくなりつつありますが、これはコスト競争に負けた結果で、私は今でもステンレスシャッターのついたものを買っています。
ボルトの話が出たついでに、ボルトの話をもう一つ。 ステンレスボルトやネジが急速に普及しています。この頭の部分の加工は非常に過酷な加工で、柔らかい加工しやすい成分を使い、疵の無い物でなければならず、高度な製造管理が必要な材料です。 ある時需要家から、機械にコイルをセットし、一晩中無人で運転できる材料が欲しいとの要求が出ました。それまでは、6時間くらい運転すると、工具が磨耗して成品の形状が出なくなるので、どうしても人間が付いて成品の形状を見ながら、工具の交換が必要である。 要員合理化して夜間は無人にしたいと言うものです。 材質を極限まで軟質化してもダメだったのですが、研究者の発想で鋼の中の非金属介在物が工具の磨耗に効いているのではないかと、硬質介在物の減少対策を講じた所、一晩中打てる材料が出来ました。顕微鏡で探してもそんなに沢山見つからない介在物がマスでは大きな影響を与えている事に驚くと同時に、広い視点から取り組む事の重要性を再認識したものです。
以上長々と書いてきましたが、身の回りにある鉄鋼成品(ステンレスに限らず)は、ここに述べたような用途開発をくぐり抜けた、関係技術者の知恵の結晶です。 改善改良を重ねた結果品質は格段に向上しているのですが、価格は私が鉄鋼業に関与したこの40年間ほとんど変わっていません。 こんなものは他には無いのではないでしょうか。