冷間加工硬化について

私のWEBを見て鉄に関する質問が時々飛び込んでくる。可能な限り知人友人の伝を頼りに返事をしている。
質問ですが、冷間圧延で加工硬化すると記載されていましたが、JIS規格の中で冷間圧延鋼板の中に硬質、1/2硬質、1/4硬質、1/8硬質と有りまし たが、例えばSPCCで標準調質の板からそれぞれの硬度を得るにはどのくらい圧延で潰 せばよいものでしょうか?

 

まずはSPCCの規格から調べた
種類の記号 C Mn P S
SPCC 0.12以下 0.50以下 0.040以下 0.045以下

 

調質区分 引張強さ N/mm2 伸び % 硬さ
HRB HV
焼なましのまま (270以上) (32〜39以上)
標準調質 (270以上) (32〜39以上)
1/8調質 290〜410 25以上 50〜71 95〜130
1/4調質 370〜490 10以上 65〜80 115〜150
1/2調質 440〜590 74〜89 135〜185
硬質 550以上 85以上 170以上
( )は原則適用しないが指定あればこの値を適用
青字は参考値

 

減面率と引張強さの関係

適当な成分系のデータが無いので、一般論として、ステンレス鋼と高炭素鋼のデーターで代用する。
左図はステンレス(加工硬化が多い)右図は高炭素鋼(0.8%C)の減面率と引張り強さの関係である。
何れもダイス伸線とローラー圧延のデータであるが、絶対値は違うものの減面率70%位までは引張り強さと減面率はほぼ比例すると考えてよい。
 

 

SPCCの減面率と引張強さ

高炭素鋼ではあるが上右図では50%減面で35Kgf程度の強度アップである。SPCCは低炭素鋼であるので、50%減面で30Kgf程度の強度アップと推定される。即ち6Kgf/10%減面と考えてよかろう。

SPCCの焼きなまし引張強さを300N/mm2とすると、1/8調質=10%減面、1/4調質=20%減面、1/2調質=30%減面、硬質=50%減面以上と推測される。

しかしながら、この冷間加工による強度は加工材温度、加工方法、潤滑材などの影響を受けるので、上記減面を目安として実ラインでの試験を行い、当該ラインでのデータで決めることが必要である。