固定焦点マクロレンズの効果(SIGMA  90mm F2.8 マクロレンズ)
最近友人から一眼レフを使った接写の方法について尋ねられた。数年前から木の花に凝っており、花のクローズアップは撮っているが、手の届かない高さにあるものは 望遠(70-300mm) のズームを一杯に伸ばし、手の届く所にあれば近すぎて望遠ズームではピントが合わないので、18-70の標準レンズ乃至はそれにkenkoのクローズアップレンズNo.3を付け、手ぶれ防止のため高速シャッター(1/1000以上)で撮影している。

接写にはクローズアップレンズを使うか、接写リングを使うかだろうと返事したものの、カタログにあるマクロレンズ(NIKONはマイクロレンズと称している)の経験が無くこれについてのコメントは出来なかった。
ニコンでは設計倍率が等倍未満の製品を「マイクロレンズ」、設計倍率が等倍を超える製品を「マクロレンズ」として区別しているとか

マクロレンズをカタログで調べると、NIKKORレンズには単焦点レンズしかない。一眼レフを使い出してから、標準も望遠もズームレンズを使い、それなりに使い込んできたので、単焦点レンズに関心はなかった。しかし、単焦点レンズの特徴を調べると、
1)レンズの構成枚数が少ない傾向にあるので逆光に強く小型軽量である。
2)色収差、画像のゆがみ、ひずみが少ない。
3)F値を小さくしやすいため、幅広い絞りの選択が出来る。当然高速なシャッターを切ることもできる。

そこで、固定焦点のマクロレンズに興味が湧き、ネットオークションから SIGMA  90mm F2.8 マクロレンズ ニコンAFマウント を落札しテストすることとした。 これで木の花を従来よりもくっきりと写せればいいのだが・・・。90mmを選択したのは、離れた被写体を少しでも大きく写したいからである。 (35mm換算135mm)

\5200で購入したマクロレンズ。そのままではピント範囲は∞〜33cmで、33cmで接写倍率1:2 になる。
接写レンズを付けることにより 、ピント範囲は約30cm〜20cmとなり、接写倍率1:1 になる。
本体レンズ、接写レンズ、偏光フィルター、そしてゴム製のフードを下に示す。
 
このレンズは最近のカタログには記載のないレンズで、D70で使えるものかどうか不明であったが、安かったので使えなければオークションに出品すればいいやと気楽に落札した。現物はレンズ内部に少しの埃は見られるが、外部は非常にきれいである。(マクロレンズを常用する人は少ないのだろう)
問題のD70への適応であるが、レンズを装着することは出来たがピントが合わない。被写体に近づけるとピントが合う。まあクローズアップは撮れるのだから我慢するかと思ったのだが、レンズ先端が飛び出ているのが気になりよく見ると、クローズアップレンズが付いていた。これを外せ ばD70のオートフォーカスも使え、何ら問題ないことが分かった。 ピントは無限大から30cmまでとなっている。
 
接写の状況 (NIKKOR18-70mm と SIGMA  90mm F2.8 マクロレンズ と クローズアップ装着比較)

先ずは所期の目的である接写を試みた。オリジナルの画面をそのまま900ピクセルに縮めたもの と接写倍率がほぼ1:1と同じになるよう切り出したものを比較している。

1円玉の直径は20mmなので、一番下の画像のみ接写倍率1:1になっている。

標準ズームにクローズアップレンズを付け可能な限り被写体に近づいて写したもの(約27cm)
NIKKOR 18-70にクローズアップNo.3を付け、望遠端でピントの合う範囲で被写体に近づいたもの。
焦点距離:70mm、F=6.3  1/500sec、ISO800 露出補正:-0.7段、シャッター優先オート
被写体からCCDまでの距離27cm  接写倍率 1:3.5 程度である。
上記の画像から 接写倍率1:1 と同じ範囲に切り出したもの。 切り出しに当たっては、リサイズはしていない。周囲のノイズも気になるし、画像もやや甘い感じがする。
マクロレンズのみを使用し可能な限り被写体に近づいて(約32cm)写したもの
購入したSIGMA  90mm F2.8 マクロレンズ ピントの合う範囲で被写体に近づいたもの。
焦点距離:92mm、F=4.5 1/500sec、ISO800 露出補正:-0.7段、シャッター優先オート
接写倍率 1:2 程度である。
上記画像から 接写倍率1:1 と同じ範囲に切り出したもの。 標準ズームの画像よりはノイズもシャープさも改善されている。若干リサイズしている。
マクロレンズにクローズアップレンズを付け 、可能な限り被写体に近づいたもの(約23mm)
F=5 1/125sec、ISO800 露出補正:-0.7段、シャッター優先オート  接写倍率1:1
この状態では手持ち撮影は不可能だった。三脚に取り付けたカメラのシャッターを指で押してもぶれている。画像としては上の2点より良いと思える。 ここまで対象物に近づくとCCDに到達する光量が減るのだろう1/125secまで落とし たら絞りが動いた。
上記にレンズに RING48 と言う照明を装着して写したもの
F=22 1/125sec ISO800 露出補正:-0.7段、シャッター優先オート 接写倍率1:1
レンズ先端に取り付けるリング状の照明を入手したので同一条件で撮影した。照明無しと同じシャッター速度にしたら、絞りが22になった。これで硬貨を貼り付けた板の表面まで表現できたし(焦点深度が大きくなった)、表面の微細な疵まで撮すことが出来た。
上記撮影時のコメント
  1) クローズアップレンズ装着時には、三脚を使ってもシャッターを指で押したのでは1/1000secでもブレが出る。 今回はセルフタイマーで撮した。(当然リモートでも良い)
ピント深度は極めて浅い、これでは手持ちの接写は相当困難だろう。
  2) 照明はカメラの左側からスタンドを使ったが、もっと明かるい照明が必要だし、少なくとも左右からの照明が必要である。 何れの写真も1/1000secから始め次第にシャッター速度を落とし絞りが効いた画像を採用した。照明を明るくすると絞りの幅が増えるだろう。
  3) レンズに取り付けるリング状の照明の効果は絞りによるピント深度も増え面白い。 この照明はやや色温度が高いようで修正が必要のようだ。 照明なしの写真を撮っておいて現像時にそれを参考に色温度修正すると良いだろう。
     
被写体との距離を離して(2m程度)マクロレンズの性能確認

撮影条件:シャッター速度1/800 露出補正-0.7 マルチパターン測光 シャッター優先オート ISO800
左はそのままリサイズしたもの。右はコイン部分を切り出したままのもの。(リサイズ無し)
 
常用している70-300の望遠ズームを300mmにして写したもの。F=13
このレンズは1万ほどで入手した中古品なのだが。結構良いピントをしているなと言う感じ。木の花には手ぶれと対象物の揺れの影響を如何に低減するかが課題と分かった。 反射の強い所は色のにじみが強い。
上記望遠をほぼ90mm(=マクロレンズの焦点距離)にして写したもの。 F=11
マクロレンズとの比較では、このレンズも結構善戦しているなと言う感じ。
色のにじみはこの写真でも認められる。
90mmマクロレンズ装着したもの(光の当たり具合が違うのは左を拡大したらややピンぼけなので撮り直したため) F=16 ピントが甘い写真でも、撮り直した写真でもコイン表面の反射光の色にじみはこのレンズが一番小さい。
この距離でもピント合わせには慎重さが必要と痛感した。
上記撮影時のコメント
  1) この程度離れた撮影でもピント合わせは難しい。接写時には接眼レンズにマグニファイヤー DG-2 を付けてピント合わせをしたのだが、2m離れれば不要だろうと横着をした報いである。花を写すときには被写体に奥行きがあるので、数多くショットして表現したい画像を選択する必要がある。
  2) 色にじみは色収差が影響していると思う。(素人故単なる憶測だが)
     
実際の被写体の撮影テスト
  
1)ヒイラギの花
  既に花の盛りは過ぎているのだが、この時期小さな花はこれしかないのでトライした。この花は5mmくらいの大きさで花弁が白いので白飛びしやすい。接近して写せる花は日陰になっており照明が必要。
体には風を殆ど感じないのだが、被写体は揺れており接写はぶれた画像が多く使える写真は1/20ほどしかない。 花が密集しているとピント合わせして少々ぶれても何処かにピントが合うが、結局は闇夜の鉄砲数で当てるしかない。
使用レンズ:SIGMA 90mm マクロ F=5 1/500 露出補正-0.7 シャッター優先オート
完全な日陰ではなかったので、リングライトは使わなかった。
この写真はほぼ1/2.5にリサイズしている
上記設定と同じだが、リングライトを使用したもの。ホワイトバランスの修正が必要であったが、修正をミスっているかも知れない。
この写真はほぼ1/2にリサイズしている。
 
2)ソシンロウバイでの偏光フィルタの効果
光沢のある花弁だとこのように反射がきつくなる。露出補正を-0.7にしているので、この反射は白飛びにはなっていないが、補正無しだと白飛びになるだろう。 このキラキラ感も捨てがたいが、上のヒイラギでは白飛びを無くすのは非常に困難だった。
偏光フィルタを使うと、上の写真に見られる反射のキツイ部分は無くなり、細部が良く分かる。
好みの問題だが、偏光フィルタを使い細部を表現する方が私は好きだ。
マクロレンズの評価

被写体を大きく撮したいときには、可能な限り近づくか焦点の長いレンズを使うことになる。私が持っている標準ズームレンズ(18-70 F3.5-4.5)では被写体まで360mmまで近づける。望遠ズーム(70-300 F4.5-5.6)では1500mmまでしか近づけられないが、接写倍率は標準(70mm)で1:5.6、望遠(300mm)1:3.8で望遠の方が大きく写せる。

これに対して、マクロレンズでは接写倍率は1:2とか1:1までクローズアップできるメリットがある。従って接写を期待するにはマクロレンズは必須である。 レンズメーカーによってはズームのマクロもあるが、接写倍率1:3程度までのものをマクロと称しているようである。

接写するとき場所の制約が無ければ、色収差、F値が小さい事を考慮し、単焦点のマクロが使い易いと思う。その場合には被写体に接近することによる光量の減少対策として、写真のようなリングライトは必須となる。 今回購入したLEDのものは実用的な使用可能距離は50cm程度であり屋内専用と考えるべきもの。